無痛分娩について
〝自分らしい〟分娩環境を見つけていただけるように。
陣痛、、、読んで字のごとく〝痛そう〟〝恐そう〟なイメージが浮かぶかと思います。
民族・国・宗教など風習によって考え方は様々ですが、、、古来より日本では、『陣痛は母になるためのプロセス、耐えてこそ花』と思われてきた歴史があるように思います。陣痛に耐えることを美徳ととらえることが間違っているとは思いませんし、医療処置を伴わない分娩は一つの理想であることに違いはありません。
一方で、麻酔を使用して陣痛を緩和する無痛分娩、欧米ではかなりの割合(アメリカでは約70%)で実施されており近年ではわが国でもその認知度・関心度は高まってきております。
人生において数度あるかないかの貴重な機会、出産、、、
〝痛みの恐怖から解放されたい〟
〝出産は自分らしさを保ちながら家族に立ち合ってもらいたい〟
そんなご希望に添えるために、当院は硬膜外麻酔による無痛分娩をスタッフ一同全力でサポート致します。
無痛分娩はデメリットもあるため、充分な無痛分娩の経験と医療知識がある医療者により慎重に実施されることが大切です。
当院での無痛分娩は、麻酔科専従経験が一年以上あり、かつ鹿児島大学病院産婦人科が無痛分娩を開始した1994年当初からそれに携わり、更には宮﨑・東京・埼玉など多くの施設で数多くの無痛分娩実施経験を有する院長が全て担当いたします。ご信頼ください。
アクティブバースという名のもと自然回帰のお産がトレンドとなった2000年、当院はいち早くその風に乗り、自らスタッフを帯同し日本赤十字社広尾病院・黄助産院を訪問、フリースタイル分娩・カンガルーケアを導入開始致しました。また同時に得意としていた無痛分娩も積極的に実施しており、幅広い選択肢の中から、妊婦さんご自身が〝自分らしい〟分娩環境を見つけていただけるよう努めて参りました。
これからも、日本の分娩環境に益々増加するであろう無痛分娩のニーズに対して、スタッフ一同研鑽に励み誠心誠意寄り添って行きたいと思います。
院長 柿木博成
理事長 院長 [医師] 柿木 博成
1991年 | 東京医科大学卒業 |
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1996年 | 鹿児島大学大学院医学研究科卒業 博士(医学)の学位取得 |
1996-99年 | 医員鹿児島大学医学部附属病院婦人科 鹿児島市立病院新生児センター 鹿児島県立大島病院婦人科 小林市立市民病院 産婦人科部長 国立都城病院産婦人科新生児センター 勤務 |
1999年 | 当院 柿木病院勤務 |
2000-01年 | 東京へ国内留学 杏林大学産婦人科 埼玉県永井クリニック 東京三井記念病院 |
2011年 | 院長に就任 |
資 格 | 産婦人科専門医 麻酔科標榜医 母体保護法指定医 日本アロマセラピー学会認定医師 |
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無痛分娩のポイント
無痛分娩は、全身麻酔ではなく硬膜外麻酔で下半身のみに麻酔をかけます。意識を保ったまま出産でき、生まれた直後から授乳やカンガルーケアが可能です。
無痛という言葉から完全に痛みがなくなると想像されがちですが、効きすぎることのデメリットも無視できないため、ほぼ完全に痛みをなくすことは可能ではありますが、スムーズな分娩進行のために、ある程度の感覚や痛みを残すサジ加減が必要となります。麻酔効果にも個人差があり無痛分娩の体験は様々皆同じとは限りません。
当院では、無痛分娩コンサルティング会社である㈱LA Solutionsと契約し、常に学問的バックアップを受けるとともに、無痛分娩実施法も㈱LA Solutions主宰の入駒慎吾先生監修のもと、”痛みゼロ”を目指し、安全第一を心掛けて行っております。
無痛分娩のメリット、デメリット
メリット
❶陣痛の軽減により落ち着いて分娩に臨むことができます
❷分娩のダメージが軽減され産後回復が早くなることが期待できます
❸ 胎児への影響、帝王切開率の上昇はないと言われています
デメリット
❶体温上昇・痒み・血圧低下が認められることがあります
❷麻酔の効きはじめに子宮過収縮が生じ、一時的に胎児徐脈になることがあります
❸ 陣痛自体が弱くなり、促進剤が必要となったり、分娩時間が延長したりします
❹ 機械分娩(吸引分娩・鉗子分娩)が増加します
❺ 稀に重篤な合併症が生じる可能性が有ります
・ 局所麻酔薬中毒…麻酔薬に中毒症状を起こし多弁・興奮・味覚障害、重篤な場合は痙攣・意識障害・不整脈・呼吸停止・稀に心停止に至ることがあります
・ 全脊髄くも膜下麻酔…麻酔域が広がりすぎ、呼吸停止・稀に心停止に至ることがあります
・ 硬膜外血腫・膿瘍などの神経障害
❻ 何よりも安全を優先する医療行為ですので、麻酔効果が充分発揮される前に分娩が終了する事態があることもやむを得ずご了承ください
❼ 産科的異常事態(常位胎盤早期剝離・子宮破裂など)の早期発見が難しくなる点も重要です
よくあるご質問
柿木病院ではどれくらいの人が無痛分娩しているの?
当院では、直近数年間で顕著に増加しており、令和5年では、3~4人に1人(27.9%)が無痛分娩によりご出産されています。
お産のときはどういう風に麻酔をするの?想像があまりできなくて..
陣痛で来院したタイミングで、硬膜外カテーテルを刺入(2箇所)します。処置の際は妊婦さんには猫がコタツで丸くなるイメージで丸まってもらうだけ、刺入時間は10~20分位です。
分娩の進行を観察しながら、麻酔薬注入を決められた手順で開始し、麻酔の効きが安定したところで専用の機械(ポンプ)につなぎ安全な量を追加投与します。
もう少し効かせたいときは妊婦さんご本人が安全なインターバルの範囲で追加投与のボタンを押すことが可能です。
陣発後に無痛分娩を希望できるの?
基本的に、無痛分娩の希望者と産科適応(妊娠高血圧症候群など)のある妊婦さんに実施していますが、最初は考えていなくても途中から無痛分娩を希望された方にも可能な限り(ほぼ全例)対応しております。
計画無痛分娩はできるの?
計画分娩で無痛分娩希望の方にも可能な限り(ほぼ全例)対応しております。
費用はどれくらいかしら?
49,000円です。
(*追加投与や時間外加算など、常に発生しない費用は除いています)
最後に
分娩台の上で何時間も陣痛と向き合うお産も、手術台の上で不安と向き合って医師の手に委ねる帝王切開も、麻酔で痛みを和らげる無痛分娩も、一例の漏れもなく、ママさんが命を張って頑張った、かけがえのないお産です。その中で、「このお産はよくない」なんていうことは一つもありません。どれも、赤ちゃんが生まれようとしていて、その赤ちゃんを信じてママが迎え入れる、そのことで十分に奇跡なのです。
もしかしたら、「思っていた通りのお産ができなかった」と下を向いてしまうママさんもいらっしゃるのかもしれませんが、当院では、「1人1人が自分らしく出産をして、すべてのママさんが『がんばったな私。よし、これから育児も楽しもう!』と、胸を張り、自分を褒め、今後の生活にワクワクしながら帰ってもらいたい」。そう願い、そう感じて頂けるように出産、入院生活をサポートしています。
そのため、妊婦さんの色々なニーズにお応えできるよう、決まった体勢にとらわれない「フリースタイル分娩」も行っていますし、「ソフロロジー式出産」も得意にしています。そして、その選択肢の一つとして「無痛分娩」も提供していますが、無痛分娩は推奨でも非推奨の立場でもありません。妊婦さんが望む通りの出産をサポートしたいと考えています。
「どういう出産方法を選べばよいのか分からない」という方は、お気軽にスタッフにお尋ね下さい。インターネットで調べられることは増えていますが、経験豊富な助産師が寄り添ってサポート致します。