無痛分娩について(院長)
2024年2月29日
陣痛、、、読んで字のごとく〝痛そう〟〝恐そう〟なイメージが浮かぶかと思います。
民族・国・宗教など風習によって考え方は様々ですが、、、古来より日本では、『陣痛は母になるためのプロセス、耐えてこそ花』と思われてきた歴史があるように思います。陣痛に耐えることを美徳ととらえることが間違っているとは思いませんし、医療処置を伴わない分娩は一つの理想であることに違いはありません。
一方で、麻酔を使用して陣痛を緩和する無痛分娩、欧米ではかなりの割合(アメリカでは約70%)で実施されており近年ではわが国でもその認知度・関心度は高まってきております。
人生において数度あるかないかの貴重な機会、出産、、、
〝痛みの恐怖から解放されたい〟
〝出産は自分らしさを保ちながら家族に立ち合ってもらいたい〟
そんなご希望に添えるために、当院は硬膜外麻酔による無痛分娩をスタッフ一同全力でサポート致します。
【無痛分娩の実際】
無痛分娩は、全身麻酔ではなく硬膜外麻酔で下半身のみに麻酔をかけます。意識を保ったまま出産でき、生まれた直後から授乳やカンガルーケアが可能です。
無痛という言葉から完全に痛みがなくなると想像されがちですが、効きすぎることで身体の感覚が完全になくなってしまい、お腹の張りや赤ちゃんの下降度を認識出来ず分娩時間が長期化したり、分娩が停止する事態を招く可能性があります。
こういった理由から、ほぼ完全に痛みをなくすことは可能ではありますが、スムーズな分娩進行のためにある程度の感覚や痛みを残すサジ加減が必要となります。麻酔効果にも個人差があり無痛分娩の体験は様々皆同じとは限りません。
以上のことを鑑み、当院での無痛分娩実施は2000年4月に麻酔科標榜医を取得(麻第25610号)した無痛分娩に充分経験のある院長が、ほぼ24時間365日で担当しております。
また無痛分娩コンサルティング会社である㈱LA Solutions様と契約し、常に学問的バックアップを受けるとともに、無痛分娩実施法もLA Solutions主宰の入駒慎吾先生監修のもと安全第一を心掛けて行っております。
【処置の手順】
無痛分娩を希望された方が陣痛発来され来院したタイミングで、硬膜外カテーテルを刺入致します。刺入は二箇所、処置の際は妊婦さんには猫が炬燵で丸くなるイメージで丸まってもらうだけ、刺入時間は10~20分位です。
分娩の進行を観察しながら麻酔薬注入を決められた手順で開始し、麻酔の効きが安定したところで専用の機械(ポンプ)につなぎ安全な量を追加投与、またもう少し効かせたいときは、妊婦さんご本人が安全なインターバルの範囲で追加投与のボタンを押すことが可能です。
この様な手順で、原則24時間対応で無痛分娩希望者と産科適応(妊娠高血圧症候群など)のある妊婦さんに実施しております。加えて、計画分娩希望の方や途中から無痛分娩を希望された方にも可能な限り対応致しております。
【無痛分娩のメリット・デメリット 】
“メリット”
- 陣痛の軽減により、落ち着いて分娩に臨む事ができます
- 分娩のダメージが軽減され産後回復が早くなることが期待できます
- 胎児への影響、帝王切開率の上昇はないと言われています
“デメリット”
- 体温上昇・痒み・血圧低下が認められることがあります
- 麻酔の効きはじめに子宮過収縮が生じ、一時的に胎児徐脈になることがあります
- 陣痛自体が弱くなり、促進剤が必要(50~80%)となったり分娩時間が延長したりします
- 機械分娩(吸引分娩・鉗子分娩)が増加します
- 稀に重篤な合併症(*)が生じる可能性が有ります
- 安全優先する医療行為ですので、麻酔効果が充分発揮される前に分娩が終了する事態があることもやむを得ずご了承ください
- 産科的異常事態(常位胎盤早期剝離・子宮破裂など)の早期発見が難しくなる点も重要です
(*)
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- 局所麻酔薬中毒…麻酔薬に中毒症状を起こし多弁・興奮・味覚障害、重篤な場合は痙攣・意識障害・不整脈・呼吸停止・心停止に至ることがあります
- 全脊髄くも膜下麻酔…麻酔域が広がりすぎ、呼吸停止・心停止に至ることがあります
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- 硬膜外血腫・膿瘍などの神経障害
以上のようなメリット・デメリットが考えられます。
したがって、充分な無痛分娩の経験と医療知識がある医療者により慎重に実施されることが大切です。
当院での無痛分娩は、麻酔科専従経験が一年以上あり、且つ鹿児島大学病院産婦人科が無痛分娩を開始した1994年当初からそれに携わり、更には宮﨑・東京・埼玉など多くの施設で数多くの無痛分娩実施経験を有する院長が全て担当いたします。ご信頼ください。
【おわりに】
アクティブバースという名のもと自然回帰のお産がトレンドとなった2000年、当院はいち早くその風に乗り、院長自らスタッフを帯同し日本赤十字社広尾病院・黄助産院を訪問、フリースタイル分娩・カンガルーケアを導入開始致しました。また同時に得意としていた無痛分娩も積極的に実施しており、幅広い選択肢の中から妊婦さんご自身が〝自分らしい〟分娩環境を見つけていただけるよう努めて参りました。
これからも、日本の分娩環境に益々増加するであろう無痛分娩のニーズに対して、スタッフ一同研鑽に励み誠心誠意寄り添って行きたいと思います。